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2017-11

1014話 芥川賞作品の「影裏」を読んでみた - 2017.08.29 Tue

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維摩池の釣り人

 文藝春秋9月号に掲載された芥川賞受賞作、沼田真佑(ぬまたしんすけ)著「影裏(えいり)」を、読んでみました。(文学界新人賞受賞作)
 いろいろ雑用が入って、ぶつぎれで読むことになりましたが、計1時間弱で詠み終えました。「えっ!ここで終わり?」というくらいの短編です。


 東北で、医療品関係の営業をやっている「わたし」と、友人の「日浅」の釣りを軸にした話が展開していきますが、けっして、釣り小説ではありません。釣りの面白さ、感動を伝えるのではなく、釣りを通して、「わたし」と「日浅」の性格や、人間関係を映し出していきます。

 「日浅」が転職して、生活がすさんでいったことや、「わたし」が、性的少数者であることは、後半分かってきますが、それらは、意図的なのでしょう、静かに、淡々と描かれています。
 そして、3月11日がやってきて、「日浅」の行方が分からなくなります・・・


感想)
 記者会見で「ジーンズを一本しか持っていないのにベストジーニスト賞をもらったようなもの」と答えていたのは、「うまい!座布団一枚」という感じでしたが、作品を読むと、それとは反対に、すごく内向きの、世渡りの下手な人物像が浮かんできます。

 芥川賞に期待される新しさや衝撃性の点では、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」を10.0とすると、7.6ぐらいではないでしょうか。選評をみても、満場一致という雰囲気が伝わってきません。
 又吉直樹の場合は、キズはあっても、8.3ぐらいはいってそうです。

 素人目では、決定打不足というか、ここだというところで書き込み不足の傾向があります。知的で、抑制が効きすぎる人なのかもしれません。賞が取れたのですから、安心して羽目を外してみてはいかがでしょうか。(だれも責任をとってくれないでしょうけど)

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1013話 映画「嘆きの王冠」への凡人ツッコミ - 2017.08.26 Sat

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 シェークスピアの歴史劇を原作として、7本の映像作品が作られました。
順に、「リチャード二世」、「ヘンリー四世 Part 1」、「ヘンリー四世 Part 2」、「ヘンリー五世」、「ヘンリー六世 Part 1」、「ヘンリー六世 Part 2」、「リチャード三世」となっていますが、観たのは、「リチャード二世」を除く6作品です。週1なので、6週間かかったことになります。

 そもそものところ(リチャード二世)を観てないので、頭では理解しても、共感できない部分もありましたが、全体の山場は、「ヘンリー四世 Part 1」、「ヘンリー四世 Part 2」、「ヘンリー五世」なので,十分楽しめました。

 何はともあれ、登場する王様を紹介します。
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リチャード二世:映画は観てませんが、ヘンリー・ボリングブルック(のちのヘンリー四世)に反乱を起こされ退位。ロンドン塔へ幽閉される。

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ヘンリー四世:リチャード二世に国外追放される。挙兵してリチャード二世から王位を奪う。うしろめたさを持っている。

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ヘンリー五世:ヘンリー四世の息子(ハル王子)。若いころは放蕩者。ホットスパーによる反乱を抑えて名誉を回復。ヘンリー四世から王位を継承。フランスとの戦いに勝つが、早世(病死)してしまう。

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ハル王子時代のお友達のフォルスタッフ(大酒飲み、好色、臆病、ずるい・・・つまり悪友)。ヘンリー五世の即位後、冷遇される。


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ヘンリー六世:ヘンリー五世が早世したので、子供のうちに即位。摂政がつく。いい人なんだけど無力で、100年戦争で得たフランス領土をすべて失い、王位を奪われる。


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右側が、政略結婚したマーガレット。バンバンとヘンリー六世に介入してくる。

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リチャード三世:脊柱側湾症。讒言や陰謀、フェークニュースで内紛を起こし、その隙間をぬって即位。結局は、反乱を起こされ戦死。ヘンリー七世の世へ。
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つっこみたい!)

■アジャンクールの戦い: ヘンリー五世がフランス軍に勝って、フランスを支配するようになつた重要な戦で、お芝居としては、仏対英、5対1となってますが、実際は、3対1程度です。それはともかくとして、勝因が、ヘンリー五世が兵員を鼓舞したことのようになっていますが、疑問が残ります。ぬかるんだ土地で動きのとれない重装備のフランス軍に対し、軽装備の長弓隊が効果的だったということなら納得できます。
 それと、持ち運ぶことのできる両端を尖らせた杭。馬防柵まではゆかなくても、馬の動きは邪魔できますよね。
 精神論だけでは、勝てないのが現実でしょう。

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ヘンリー五世時代、長弓、軽装の歩兵

■戦術・武器: 初めのころと、最後のほうで、戦術や武器の進歩が見られません。実際は、どうなんでしょうか。100年も戦争をやっていれば、大幅に進歩すると思いますが。(鉄砲は、まだ微妙)

■王位継承権: 正統だとか、なんだかんだいっても、親戚の中で、強いもの勝ちで奪い合ってるわけで、ジャッジする人(教会、市民、議会)とか、法の支配は、この後なんでしょうか。個人的には、なんによらず、世襲って大嫌いですが。

■今と同じ: 500~600年前の話ですが、人間関係中心で描かれているので、「いるよねこんな奴」という行動様式のそっくりさんが、政治家(男女問わず。奥方も含む)ばかりでなくサラリーマン、各種先生たちの中にいっぱい見受けられます。人間は大して進歩してないのだ。それと天候不順(悪天候のシーンが多い)。乱世の背因か。

1009話 奈良岡朋子さんによる朗読劇「黒い雨」 - 2017.08.08 Tue

 奈良岡朋子さんの一人舞台(朗読劇)「黒い雨」を、広島に原爆が投下された8月6日に観ることができました。
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          (案内ビラ)

 会場の名古屋西文化小劇場は、西区浄心にあって、ややこしそうですが、JR中央線沿線からは、鶴舞で地下鉄鶴舞線に乗り換えれば、一発で最寄りの地下鉄浄心駅に着きます。

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地下鉄浄心駅を出て、すこし南に歩くと、

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右手に、西図書館と西文化小劇場の建物が見えます。

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 開演前の舞台
 カップとクッションが用意されていますが、これが重要な役割を担いました。


 井伏鱒二原作の「黒い雨」を、笹野博司氏が上演台本にまとめられた作品で、ドラマというよりもセミドキュメンタリーの味わいがありました。

 矢須子の結婚について、被爆者ではないかという疑いが、大きな障害になっている中で、8月6日に何があったのかということを、感傷的ではなく、ファクトの集合体として表現してゆきます。

 内容については、原作を読むことができますし、NHKの特集でもビッグデータの解析というかたちで、被爆の実態を明らかにしています。
 しかし、一人舞台、朗読劇として生の人間の音声で伝えられる情報は、聞いているものの深いところに作用して、核が抑止力だと言っている連中の腹の中が透けるような能力を与えてくれます。


 今年の公演は、7月6日の川越からはじまり、8月21日の浜松まで、計21回ということです。地域としては、北は秋田から、南は九州南部まで、飛び回っている感じです。
 この日、8月6日の公演は、17回目にあたり、日程が終わりに近づいているせいか、疲れの色がみえました。
 本をクッションに置いて読んでおられるのですが、手が震えるときがありました。
 また、声を詰まらせて、喉をしめらせるため飲み物のカップに手をやることも少なくなかったのです。

 あとで運営関係者から聞こえてきた話によると、風邪気味だったということですが、そもそも、87歳にしては、強行すぎる日程であることは間違いありません。移動を半減すべきでしょう。

 今回の公演で、被爆というわけのわからないものを個人個人に背負い込まされて、人生をネジまげられていった様子が、直接、被爆者の声を聴いたようによく分かりました。
 また、女優の執念のようなものを身近で見せてもらえました。
 本人はいやかもしれませんが、体調の悪さによって、結果として、演技にすごみが加わっていたことはたしかです。

1003話 劇団民藝「蝋燭の灯、太陽の光」と、トランプ支持層 - 2017.07.21 Fri

 名演7月例会で、劇団民藝による「蝋燭の灯、太陽の光」を観ました。
(名演:名古屋演劇鑑賞会クリックでホームページへ)

 原作:テネシー・ウィリアムズ、訳:吉原豊司、演出:高橋清祐

(会場:名古屋市民会館ビレッジホール、日時:7月18日 18:30-21:20)


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 宣伝ビラから
左上男性:ブラム・ピルチャー(父親・炭鉱夫) 千葉茂則
左上女性:へスター(ブラムの妻) 箕浦康子
右上女性:スター(ブラムの娘) 桜井明美
右上男性:バーミンガム・レッド(炭鉱夫で組織化を推進) 吉岡扶敏
 下中央:ファーン(ブラムの長男ジョンの未亡人) 日色ともゑ

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下の写真 右下から2段目右:ジョエル(ブラムの次男) 細山誉也
下の写真 右下から2段目中央:ルーク(未亡人ファーンの息子) 岩谷優志 

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 「欲望という名の電車」で有名なテネシー・ウィリアムズのごく初期の作品です。
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超アブスト)
 1930年前後のアメリカ南部アラバマ州の炭鉱町。

 炭鉱夫プラムのところに、長男ジョンの嫁ファーンが子供を連れて住み着く。長男ジョンは、他の街で炭鉱夫だったが、事故で亡くなったのだ。

 未亡人ファーンは、必死に働き、息子ルークを高校に行かせようとしている。息子を炭鉱夫にしたくないのだ。

 5年後、進学に資金が少し足りないということで、ルークが炭鉱へ働きに出る。そして、恐れていた事故が発生。プラムの次男ジョエルが死ぬ。

 その事故を機に、レッドという男を中心に、労働条件改善のストライキが始まる。
 炭鉱側の差し金で、炭鉱直営店では食品も買えなくなった。賃金が炭鉱直営店でしか使えない金券で支払われていたため、他の街から食料が買えない。ストライキ続行には、未亡人ファーンが貯めていた現金が必須となった。

 
 当然、ファーンは拒否するが、レッドの説得で考え方が変わり、全額を提供する。そのおかげで、ストライキが続けられ、炭鉱側との合意に至った。

 後日、なぜ、お金を提供する気になったかという問いに対してファーンは、「それまで蝋燭の灯の届く範囲しか見えていなかったけれど、話を聞いて、太陽の光のもとで見えるような広大な風景が見えて、いろいろ分かったから」と答える。
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感想)
 はじめから終わりまで、もめごとや事件の連続で、ハラハラさせられた。
・プラムの妻へスターが、息子の嫁ファーンを受け入れられるか
・経営者側の個人的な嫌がらせに耐えられるか
・落盤事故の被害
・ストライキが成立するか
・ファーンの資金提供がどうなるのか
・レッドの身の安全
といった、切羽詰まったことばかりだ。


 一方で、笑えるシーンは無かった。泣けるシーンも乏しい。感情のベクトルで言うと、怒りと悲しみ(哀しみ)が支配していた。

 ファーンが考えを変えるところ、レッドの口説きの部分が核心のはずだが、あまり説得力はなかった。
「蝋燭の灯、太陽の光」という説明は、理屈としてはよく分かるが、ファーンの心の変化を本当にあらわしている言葉だろうか。

 また、ストライキが成功しそうなところで終わっていて、そこに、やや喜びを感じさせるが、ホンマにうまくいったのだろうか。


 以上は、脚本に対する印象であるが、演技の方はよく練られていた。といっても、私にわかるのは、登場人物へのなりきり度ぐらいだが、日色ともゑはもちろん、箕浦康子、岩谷優志など、さすが民藝といった感じだ。

 
 さて、表題にトランプ支持層と付けたのは、炭鉱夫のプラムが、手紙が読めないだけでなく、保守的で蝋燭の灯のように極めて狭い視野でしか物事を捉えられない人物として描かれていて、これこそ現代のトランプ支持層のように見えたからである。実際、炭鉱の街では、トランプ支持者が多いということであり、様々な問題が露呈しても、支持を続けているのはこんな人たちのようだ。

1001話 記憶をたどる…4日前(狂言の楽しみ方講座(2)) - 2017.07.15 Sat

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 名鉄瀬戸線 新瀬戸駅

 随分前のような気がしていますが、狂言の楽しみ方講座(その2)を聴講のため名古屋市内へ向かったのは、4日前のことです。
 7月11日(火)14:00-15:45、名演会館会議室、講師 和泉流狂言師 佐藤 融さんといったことも書いておかないと、この暑さで、すぐに記憶から抹消されてしまいそうです。(政府高官なみ)

 なお、この日は電車を使ったので、車中で「ホモサピエンスの誕生と拡散」を読み終えることができました。


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 講座2回目は、登場人物を中心にした狂言の種類の紹介と、能と狂言の関係の説明です。とくに、後者の説明に時間を割いておられました。(はじめに、ウズラの鳴き声の補足があったのですが、聞いたことがないので、チンプンカンプン)
 
 登場人物としては、いずれも怪しげな「山伏、僧」、「むこ」、「神」、「鬼」、「いたずら者」で、能とちがって、立派な、あるいは強い人物ではなく、インチキくさいのが狂言では、お約束です。


 能との関係では、司会進行のミトマさんの資料にあった「能のパロディ」という部分は省略し、「能に参加する狂言」を中心に実演を交えて解説。
 間狂言(あいきょうげん)として、
  語 間(かたりあい):能を受けての語り部的な役割
  応答間(あしらいあい):能の中の脇役として出演
  劇間(げきあい):能と能の間に入れる(ちょっと軽い)演劇として


 能と狂言を交互に上演するのが標準的

 死者からのメッセージを伝える役(例えば、歴史的事件を伝える)もある。

 この日の実演は、「那須與市語(なすのよいちかたり)」でした。
 語り手と與市、判官、源氏と平家の者、後藤兵衛実基を、位置を移動しながら一人で語り分ける。

 通常の1.5倍速で演じたということで、演じ終わってから息を切らしておられました。

 私の方は、判官が與市をほめて「・・・人馬には息をつかせよ。おことはつうと 奥の間へいて。乳すはい 乳すはい」の台詞の「乳すはい 乳すはい」が気になってしかたがなかったのですが、この乳すいは、濁り酒を飲むという意味もあるそうです。

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 ということで、今回は、話が、やや断片化していたのか、当方が寝不足だったのか、ちょっとモヤモヤが残りました。一方、外国人と思われる女性が、訛りながらも熱心に質問していたのが印象的でした。
 これから狂言を観る機会があったら、すこしは見方が変わるかもしれません。講師に感謝です。

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Author:dadebeso
愛知県尾張東部在住. 宗教的なものではありませんが,場所の持つ力に関心があります.また,ものごとの起きるタイミングという意味での時の力にも関心があります.そのほか,落語,オーディオは,子供のころからの趣味です.

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